四畳一間じゃ狭すぎる。

初めておかん&おとんの徒然漫才日記。

胎児の頃から悪ガキで

先の土曜日に妊婦検診へ行ってきた。

紺氏は一番初めのころに「できるだけ病院についていく」と言い放って以来、本当にまめまめしくついてきてくれる。

お互いに仕事をしているから検診日はどうしても土曜になってしまうのだけれど、かえってそれが良いのかもね。

そんなこんなで、カンカン照りの道をてこてこ歩いて病院へ向かった。

前回の検診は1か月ほど前。

あのときはまだつわり真っただ中で、徒歩10分程度の道のりも生きるか死ぬかといった具合だった。

それが今や「夏のにおいだねえ」なんて悠長なことをのたまう余裕さえある。

ビバ・つわりの終焉!!

あんなヒトとしての尊厳を根こそぎ薙ぎ払われるような経験はできればもう二度としたくない。

前回は産院を変更したために実質妊娠検査の名目だったので、妊婦検診と自体は今回が初回だった。

血液検査と、子宮がん検診と、超音波検査の三種類。

いちばん初めに血液検査をしたのだけれど、ここでわたしの妙な癖が発動。

というのもわたし、なんでか注射されているところを至近距離でガン見しちゃう癖があるのだ。

針が自分の皮膚に吸い込まれて、薬が注入されたり血が抜かれて行ったりするさまをそれはもうじっとりと見ている。

注射が好きなのかと聞かれたら、たぶんどちらかと言えば嫌いだし、怖いんだと思う。

「怖いんなら目を瞑ってたらいいじゃない」

っていうのをよく聞くけど、その方が怖くない?

どのタイミングで針が刺さって、いつ痛みがやってくるのがわからない方がよっぽど怖い。

そういうわけで今回も例に漏れず採血の様子をねっとり眺めていた。

結構なおばあちゃんの、おそらくベテラン看護師さんで採血がめちゃくちゃ上手だった。

わたしは血管が深すぎる&細いらしく血液検査の折にいつも難儀するんだが、これほどまでに滞りないのは初めてだ。

かつてメンタル病院で検査した時なんて、左右の腕に針をぶち込まれ、血管を見つけられず注射を刺したままぐりぐりかき回された挙句、手首の血管から採血(かなり痛い)をすることになり、おまけに血管付近の神経をばっちり傷つけられしばらくしびれが残った。

それがだ、腕を変えることもなく一発で血管をとらえ、ものの数秒で採決を終わらせてくれた。

もはや尊敬の念を抱いた。あっぱれですおばちゃん。本当にありがとう。

ただ、わたしがあまりにも針を見つめすぎているあまり「大丈夫??」と3回くらい確認されたよ……。

採血で具合が悪くなるひともいるというから気にかけてくれたのだろうけど、ガン見していただけだよ。


しばらく待合室に戻ったのち、再び診察室に呼ばれて残りの子宮がん検診と超音波検査。

ここでは紺氏も同室してよいというお達しがあったので、一緒に入ってもらった。

わたしは先に、別室で子宮がん検診を受ける。

例のあの、ウィーンってお股をおっぴろげられる椅子だ。

妊娠検査の時から何度も座っているし、そもそも変なところが図太いわたしには恥じらいというものが欠如している。

でも正直なところ、お医者さんに対して恥ずかしがったってしょうがなくない?

向こうはきっと、もう飽きるほど見ているんだろうからね…。

もはや鼻すらほじらんくらいの気概でお股おっぴろげ椅子を終え、紺氏の待機する診察室に戻りお待ちかねの超音波検査。

人前(お医者さんと看護師さん)でおなかをベロンと出して寝転ぶわたしを、紺氏が珍獣にでも遭遇したかのような面持ちで眺めやがったのを見逃さなかったからな。

今回から経腹エコーとなった超音波検査。

おなかの中のコツメさんは、エコーを当てられるやいなや何やらもにょもにょ動き始めた。

「あー、ちょうどいま動き出しましたねえ」

とお医者さんが言うが早いか、もにょもにょダンスが鋭いパンチとキックに切り替わる。

それはもう親の仇のごとく殴る蹴る。

もうお母ちゃんとお父ちゃんには「てめえ起こしやがってぶっ飛ばすぞ」のパンチキックにしか思えなかったっス。

身長も体重も順調に増え、成長過程も問題ないよう。

そしてこの動きっぷり。

うむ、元気で何よりだ。


ところで帰宅後、紺氏がこう尋ねてきた。

「別の部屋に行ったとき、透子は何をしてたの?」

わたしは彼に、事細かく子宮がん検診の様子を説明してあげたわけだが、紺氏ここでおなじみのおっちょこちょい発言を発動。

「なんか入れられて、感じちゃったりして」

するわけねえだろ。

うすら冷たい金属の輪っかだぞ。

そんなもんで押し広げられて、子宮口ゴシゴシこすられるんだぞ。

間違いなくお前様はエッチなあれこれの見過ぎだこの野郎。

鉄パイプにちんちん突っ込んで気持ちいいんか貴様は。

…という思いをぐっと飲みこんで「そんなわけないじゃん~」と笑って返したわたしをだれか褒めてくれ。